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Dr.Fujitaのコメント:
 この第4章ではガンの発生について興味深い学説が紹介されています。
ここで述べられた栄養芽層については、現在の万能細胞に共通するところが沢山あります。

事実、万能細胞を実用化するためのハードルの一つが、増殖中に発生してくると思われるガン化の心配です。

ステロイドは、ガン化を引き起こすことは明らかであり、その抗ガン剤としての使用についても、将来的には問題も
多く出てくることでしょう。

 更に、ここでは癌治療として免疫療法(現在の免疫を抑制するという意味での免疫療法ではなく)の意義についても
述べられています。
癌を攻撃する因子としての白血球を活性化するという考えは、西洋医学では一時的に注目されましたが、
現在ではほとんど過去のものとなっています。

 しかし、自然治癒力を高めるのは白血球のうちリンパ球であることが明らかになっており、
この自然治癒力を高める最高の 方法が自律神経免疫療法なのです。

 もう一つ、膵臓の酵素についても言及されています。

すなわち、ここでは人の体の中で最も癌の少ない部位が十二指腸と 小腸であり、
その秘密が膵臓から分泌される消化酵素にあると述べられているのです。

 このことが、何故、肉類を食べると癌になりやすいのかという疑問にも答えてくれているのです。

 では、第四章からの引用です。

 

第四章 癌は生命の奔流である

 1902年、ジョン・ぺアード教授はその論文で---

 高度な悪性癌細胞と妊娠初期の正常な前胎児胚細胞との間には、識別できる差異はない。

と述べている。

癌のト口フォプラス卜(栄養芽層)学説

 学術用語では、この正常な細胸を「トロフォプラスト」 (栄養芽層)という。
広範な研究を行って、「癌と栄養芽層は同じようなもの」との結論を得た。
そこで、この学説は「癌の栄養芽層理論」として知られている。

 妊娠中、栄養芽層は実によく癌の特性を示す。
それは、急速にしかも無秩序に増殖を続け、途中の母体細胞を食いつくしながら子宮壁に侵入する。
子宮壁は胎児を着床させて保護しながら栄養分を補給する。
栄養芽層は、他の芽細胞から発生して連鎖反応的に成長していく。
しかし、特別な性質を持っており、これ自体が完全な器官や組織に進化したり、完全な胎児胚となったりすることができる。

 栄養芽層のうち80%は、将来の子孫のため、卵巣や睾丸に配置されている。
残りの約20%は、体内のどこかに分布されているが、その目的はまだよくわかっていない。
おそらく損傷したり老化したりした組織の再生、すなわち修復過程に関与すると考えられる。
エス卜ロゲンホルモンは、生組織体に変化を与えることでよく知られている。
これは普通、女性ホルモンとして考えられているが、男性にも存在して、数々の活性機能を行っている。
たとえば物理的な外傷、化学的諸原因、あるいは病気など、何か身体に損傷が起こると、
エス卜ロゲンとステロイドホルモンが非常に多量に集まってきて、細胞の発育や身体の修復のための刺激剤、
すなわち触媒として、その役割を果たすものと考えられている。
栄養芽層に器官刺激剤としてのステロイドホルモン類が接触、作用すると、栄養芽層を増殖させる動機になることは、
現在、周知の事実である。

 しかし、この変化が一般の修復過程の一部として生殖以外の目的で起こると「癌」になりやすい。
もっと正確にいえば、われわれの身体の中の修復過程で仕事の終わった後でも、増殖がストップしないで、
さらに進行し統ける場合が「癌」だといえよう。

ハーディン・B・ジョーンズ博士は--

 癌に関して第二番目に重要な考察としては、
「歴然として発見される各種の癌は、発生存続の期間に抑制されないで、無秩序に進行する特性を持っている」ということである。
本来は癌の進行の途上で何らかの「自然の生理的な抑制作用」が働き得るはずであるが、
普通みかける末期に達しやすい癌の早い進行は、この抑制が何かの条件の不足でうまく作動しなかったことを強く示している。

スチュアート・M・ジョーンズ博士は---

 -中略-

 避妊用のピルも、特に強力なエストロゲンホルモンであり、取り返しのつかない乳房の変性を起こすだけでなく、
服用しない婦人の約3倍も癌にかかりやすくなることが明らかにされている。

 O・サトリュース博士は---

 エストロゲンは、癌を発育させる飼料のようなものである。
下等動物に癌を起こさせるには、まずエス卜ロゲン類を食ベさせれはよい。

-中略-

制癌剤としてのB・C・Gの評価

-中略-

 癌征服に限っていえぱ、「膵臓と栄養の要因」を考慮に入れず、
白血球理論だけにたよって研究では、その進歩はひどく制約される。
興味深いのは、B・C・Gで成功した多数の報告をよく検討してみると、栄養的要因を同時に重視したことも寄与しているらしいことである。

 たとえばウィーラー博士は、自分の経験から考えて、今までの方法による癌療法はほとんど無効だと悟り、
有効な代案としてB・C・G療法を試してみようと考えた。
そこで、この方面の知識をもつ少数の医師の一人、リビングストン博士に依頼した。
ウィーラー博士の論文によると---

 (ウィーラー博士は)B・C・G注射を受け、厳しい低コレステロール食と必要な抗生物質をとった。
食事としては精製糖、家畜類およぴ卵を禁じ、代わりに生野菜や魚、およぴ複合ビタミン剤を十分に摂取した。
二カ月後には腫瘍のはれも引いた。
ごく最近、検査を受けたが、癌細胞は衰退し、正常な健康状態に復し、新生健康組織が表れはじめた。

 以上の結果を分析してみよう。ウィーラー博士に与えられた食事は、
消化時に膵臓酵素をあまり消費しないような食物から成り立っている。
これはビタミンB17療法の医師がすすめる食事に近いものである。
この食事療法で、効率よく大半の膵臓酵素が血液中に吸収され、うまく癌細胞を襲撃することができたのである。
さらに、複合ビタミン剤も与えられたが、これら二つの要因がB・C・G単独の作用と同様に重要であったことは無視できない。

癌制御ヘの膵臓の役割

-中略-

 膵臓から酵素を分泌する場所に近い部分の小腸は、癌がほとんど発見されない数少ない場所の一つであるが、これは重要なことである。
膵臓自体は、しばしぱ初期の悪性転移にまきこまれることがある。
その理由は、すべての重要な酵素は、膵臓から小腸に入って初めて「活性化」して、吸収されるからである。
だから、小腸は重要な酵素群に満ちているが、大本の膵臓はその恩恵にほとんどあずかっていない。

 ある臨床医は-‐

 悪性腫瘍の病理学で強く印象づけられるのは、小腸ではほとんど癌が起こらないのに、
そこから遠く離れた大腸で癌が起きやすい点である。

 糖尿病患者は膵臓機能の欠陥に悩むが、一般に、正常な人と比べて3倍以上も癌にかかりやすい。
これは長年、医学研究者の謎とされていたが、癌の栄養芽層学説が脚光を浴びるようになってから説明がつくようになった。
この説はクレプス博士が主張してきたもので、独断的でなく、癌に関するあらゆる現象を説明しつくす唯一のものである。

M・ジョーンズ博士によると---

 この学説は、現存の癌理論の中で最も古典的ではあるが、強力で妥当性があると思われる。
今まで新しい事実がいくら出ても否定されたことは一度もなく、70年間も確認されてきており、
さらに、最近の新しい癌研究情報とも一致している。
今までの膨大で複雑化した癌科学も、この学説の光を当てると一貫性を持ってくる。

 真実は驚異的であるが単純でもある。

今、ほとんどの研究者が、癌は身体の異物であり衰弱と死ヘの過程の一つであるという推論のもとに研究しているが、
真実は「癌は生命回路の活動の一部」であり、「生命とその復元ヘの奔流」の一つの現象なのである。

 

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